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A Quiet Place クワイエット・プレイス

アメリカ映画 (2018)

クワイエット・プレイス』は、プレデターのような原始的地球外生命による人類の淘汰というアメリカが大好きなテーマに、音のない世界というシンプルでパンチの効いたアイディアを持ち込み、世界中でヒットした作品。音を立てれば、即、怪物に感知されて殺されることから、そこでは手話しか使えない。以前、紹介した感動のドキュメンタリー、『Moonlight Sonata: Deafness in Three Movements(月光の曲/聾啞の3つの楽章)』(2019)を思い起こさせる。なぜかと言えば、5人家族の長女リーガンは、聴覚障害者で人工内耳を埋め込んでいる。しかし、天災的事変により、外付けのマイクの変換装置がうまく機能しなくなってしまい、再び “音の聴こえない世界” に戻ってしまった。それを何とか元に戻そうと、父は、時々物資の補給にでかける “住民の絶えた町” に行き、変換装置の代わりになるものを漁っては試している。そのほとんどは、リーガンの聴神経に激しい衝撃しか与えなかったが、偶然、その衝撃音が怪物をも苦しめることが分かり、将来に展望が持てるという場面で映画は終わる。こうして、映画のメインフィレームを書いてくると、この映画を紹介する唯一の目的であるノア・ジュープ演じる長男マーカスの出番がどこにもない。その理由は、手話を使った世界ということで、聴覚障害者のミリセント・シモンズ演じるリーガンを重視したことによる “歪み”。ミリセント・シモンズは、『ワンダーストラック』(2017)の時から好きではなかったが、今回過度に重視された結果、演技の未熟さが際立ってしまった。ハンディキャップの俳優ということで9つの賞にノミネートされたが受賞はゼロ。『ワンダーストラック』の時も7つノミネートで受賞ゼロだった。こういう “偏った同情” は、本人を傷つけるだけだと思うのだが… かくして、3人の子供のうち1人を重視した結果、1人は映画開始10分で消え、もう1人のマーカスも、映画開始後30分は、存在感はゼロ。さすがに後半になると出演場面は若干増えるが、映画のラスト10分ではまたゼロに逆戻り。怒りを込めて 部分紹介とする。

全身を装甲で覆われた狂暴な地球外生命体が、2020年6月18日に隕石とともに地球に落下、それ以後、人類は絶滅の危機に瀕していた。怪物の移動速度は地球上で最も早いチーター並みかそれ以上。強力な前脚は鋼鉄をも切り裂く。ここまでは、怪物映画で よくある設定だが、最大の特徴は、視力がなく、代わりに聴覚が異常に発達していること。だから、生き残るためには音を立てること、すなわち、話すことができない。映画は、そうした凄まじい状況下で生き抜こうとする5人家族の、襲来89日目からスタートする。この日、一番下の弟、5歳のボーが、14歳の姉リーガンの “親切” が原因で怪物に殺される。姉は、それ以後、鬱々とした日々を送り、自分の行為でボーを死なせたことで父から嫌われていると思い込む。そして、襲来473日目。父は怪物恐怖症の12歳のマーカスを、将来、一家を支える “男” に育てるための第一歩として、隠れ住む農場から連れ出す。そして、“自然の大きな音” がする場所では、話しても安全だと教える。しかし、その間、農場では思わぬことが起きていた。母が、出産予定日より20日も早く破水し、階段の釘を踏んで大きな音を立て、怪物が侵入してしまったのだ。母は、夜間照明をアラートに切り替える。農場の近くまで来てアラートに気付いた父は、マーカスに花火を打ち上げさせ、その音で怪物を外に誘い出し、その隙に妻を助ける。一方、マーカスは姉とサイロのてっぺんに避難するが、蓋が外れてトウモロコシの中に落下し、その音で怪物が襲いかかる。しかし、聴覚障害者の姉が付けている不調な人工内耳の変換装置が出す音を怪物が嫌い、サイロに穴を開けて逃げ出す。2人は、サイロから出て、捜しにきた父と再会を果たせたが、すぐ近くに残っていた怪物によって襲われ、父は命を賭して2人を助ける。母と合流した2人は、地下室に隠れるが、そこに怪物が侵入する。変換装置の雑音の効果に気付いた姉は、その異常音をマイクで増幅させることで怪獣の装甲を開かせる。そして、母がライフルで射殺する。

ノア・ジュープ(Noah Jupe)が、『ワンダー 君は太陽』(2017)の後に出演した映画。2005年2月25日生まれで、映画の撮影は2017年5月から11月だったので、撮影時は12歳。臆病な少年という設定なのと、元来が恐怖映画なので、恐怖に引きつる場面が多く、『ワンダー 君は太陽』の時のような多彩な表情は影を潜めている。

あらすじ

映画の最初の「来襲から89日目」、アボット一家が拠点としている農場を出て、必需品を供給するため廃墟と化した町まで来ている。一家が訪れた町はLittle Falls。ニューヨーク州に実際にある人口5000人ほどの小さな町。ロケもこの町で行われた(下の写真で、上が映画、下が https://www.atlasofwonders.com/に掲載されていた現地写真)。メインストリートの州道169号線の北側歩道に沿って長さ300メートル以上のアーケードがあるのが特徴。その中のミニ・スーパー「Larkin’s Market」に一家は入る。棚はほとんど空だが、薬局には薬が放置されている。長男のマーカスはぐったりとして棚にもたれている(1枚目の写真)。明らかに細菌性、もしくは、ウィルス性の病気だ。母が必死に薬を探す〔これが町に来た目的?〕。そして、何かを見つけ、そぐ横にいたマーカスに、持参した水で飲ませる〔後で、マーカスは、父に抱かれて運ばれてきたことが分かる。なぜ、置いて来なかったのだろう? 病気が重いのなら安静にしておいた方がいいし、このくらいの年になれば、絶対に音を立てるなという命令は100%守れるはずなのに⇒マーカスを病気にする必然性は皆無で、その後の展開にも一切関係しない。単に、Noah Jupeに出番を与えないための監督の偏見〕。その後、父が、音声信号の増幅に使う可能性のある部品を見つける。また、まだ幼い次男のボーが、スペースシャトルの模型を持ってくると、父は注意深く取り上げ、本体から電池を抜き、棚に置く〔本体は落とせば音がするし、電池をONにすれば電気的な音がする〕。しかし、姉は可哀想に思ったのか、両親が出て行った後でシャトルをボーにこっそりと渡す(2枚目の写真、矢印)〔渡すべきではなかった〕。そして、ボーは姉がいなくなった後、電池も棚から取り上げる〔父は、手の届かない場所に置くべきだった〕。一家は帰途に就く。先頭は、マーカスを抱いた父、次が母、姉、ボーの順。お互い、かなり間隔を開け、使われなくなった線路上を歩く。一家は、鉄橋に差しかかる〔いつの間にか、線路ではなく道路になっている〕。3人は、橋を渡って行くが、ボーだけは橋の手前で止まる。しばらくすると、先頭を歩く父に 異様な音が聞こえてくる。音がするはずのない世界で、電子音がする。振り返って見ると(3枚目の写真)、橋の手前でボーがシャトルに電池を入れ、電源をONにし、振り回して遊んでいる。父は、マーカスを下に置くと、ボーに向かって全速で走る。長女だけは、耳が聴こえないので、何が起きているのか分からない。父が走り始めてようやく事態を悟る。自分がシャトルをボーに渡したせいで、ボーに重大な危険が迫っている。父は必死で走るが、それよりも早く怪物が現れ、ボーに襲いかかる(4枚目の写真)。そして、タイトルが表示される。「クワイエット・プレイス(静かな場所)」。音を立てれば、即刻、怪物に命を奪われる恐ろしい世界。そこでは、静寂を厳守しなければ生きていくことができない。

映画の第2パートは、「472日目」。映画開始後10分と少々。冒頭の場面の1年と半月後。場所は、一家の農場。映画を観ていて、建物の状況が全く理解できなかった。よくやく理解出来たのは、ロケ地の状況が分かってから(下の写真) 。中央の道路は 映画では消され、左の家が “母屋”、右の木の陰に “納屋” があり(1棟のみ映っているが、実際には3棟ある)、サイロも大小5基ある。地下室は母屋と納屋に1つずつあり、それが映画を分かりにくくしている。この第2パートで、姉は、未だにボーの死の責任に苦しんでいる。そんな娘を母が納屋〔日常生活を送っている場所、地下に貯蔵室がある〕に連れて行くと、場面は切り替わり、母屋〔2階建の白い家〕の地下室に 10台以上の大きさが不揃いのTV受像機が壁に並べられ、監視カメラの映像が映っている。すべて、父が何度も町まで行き、調達してきたものであろう。ホワイトボードには、重要な新聞が張り付けてある。その1つには、大見出しで、「奴らは聞いている/生き残るために知っておくべきこと」と書かれ、トップ記事は、「ロックダウンしたニューヨーク」〔コロナ禍を思わせる〕。その右には、「隕石、メキシコに落下」というものもある。地球外生命の突然の出現と、隕石との関連を強く示唆している。その下には、父の手書きの殴り書きがある。左側上部には、怪物と書かれ、問題点が「盲目音を攻撃装甲-この周辺に何匹?? 確定数 3」と並べられている。さらに、最下部の右には、目立つ色で「弱点 は何だ」という、最も知りたい疑問が明示されている(1枚目の写真、矢印は最重要の赤枠2つ)。右側上部には、生き抜くと書かれ、問題点は 「医療用品-防音」の2点のみ。次のシーンでは、屋外に放置されたピックアップトラックの運転席でマーカスがハンドルを回して遊んでいる(2枚目の写真)。ルームミラーに父の姿が映ると、マーカスは窓から出て〔ドアを開け閉めすると音が出る〕、父の前で一瞬止まり(3枚目の写真)、そのまま納屋に行き、地下に降りて行く〔たったこれだけ!〕。その際、地下の入口の脇にマットレスが置いてあるのが見える〔扉がないので、いざと言う時、怪物が入って来られないようにするため〕。父は、穀物貯蔵用サイロの上に登り、農場の全体を見回す〔これで、農場の主要部分が紹介されたが、映画では分かりにくい〕

夕食の時間。場所は納屋。食べ物のほとんどは、自分達で作った野菜。祈りの言葉を唱える代わりに、手をつなぎ、心の中で感謝の意を伝える(1枚目の写真)。その後は、姉とマーカスは2人でボードゲームを始める。サイコロ2個を振るが、布の上に軽く落とすだけなので、ほとんど音はしない。マーカスが駒を進めた先が、すごく不利な場所だったようで、マーカスの顔が曇り(2枚目の写真)、姉が嬉しそうな顔になる。そして、姉が手を伸ばすと、それを阻止しようとマーカスが手で払い、横に置いてあったランプを直撃。ガチャンと音を立てて倒れ、床に火が走る。父は、布をかけて火を消すが、音がしてしまったことに変わりはない。父と母は、怪物を呼び寄せたのではないかと恐怖にかられる。すると、凄まじい音がし、怪物がやって来たのではと 覚悟する。父が窓の外を見ると、小型動物2匹が納屋から離れて行く。父と母は心からホッし、マーカスは「ごめんなさい」と、口を動かして謝る。その後、農場の全景が映る(3枚目の写真、左が納屋、母屋はもっと左にあるが、ロケ地に道路があるため映っていない)。張り巡らされたライトは、怪物が “盲目” なので危険ではなく、人間にとっては暗闇より安全が確保できる〔緊急時には、白ではなく赤いライトが点灯される/電源は、納屋の屋根に置かれたソーラーパネル〕。この全景シーンの後、先ほどの2匹がトウモロコシ畑で怪物に襲われる。これが、①よくあることなのか、②とうとう敷地内まで来てしまったのか、識別はできない。父が 母屋の地下室で、娘の人工内耳の変換装置を何とか動くようにしようと頑張っていると、そこに母が降りてくる。2人はTVモニターの前で抱き合う(4枚目の写真)。母のお腹は大きく膨らみ、いつ出産してもおかしくない。

「473日目」。翌日だ。映画の本編は、この1日の出来事。母が、カレンダーに血圧の値を書き込んでいる。その日は 10月3日水曜日〔10月3日が水曜で、24日が満月なのは2018年しかない→あとで、“今日” が2021年だと分かる→出産予定日(10月23日)を知るため、古いカレンダーを使い回し?〕。そのあと、母は、マーカスに割り算を教える。すると、リュックをかついだ父がマーカスを見て、自分の腕時計を指す(1枚目の写真)。マーカスは、口と手で 「お願い、行かせないで」と頼む。母は、口と手と かすかな声で 「大丈夫。お父さんはあなたを守る。いつだって」と安心させる。マーカスは 母の手を握りしめ、行きなくないと意思表示。「聞いて。これを習うのは大事なことなの」。マーカスは嫌がったまま(2枚目の写真)。「あなたに、自立できるようになって欲しい」。嫌がったまま。「私の世話をしないと。おばあちゃんになって、白髪で 歯もなくなる」と伝え、歯のない老人の真似をしてみせる。それを見たマーカスが思わず微笑む(3枚目の写真)〔この映画の中で、マーカスが唯一微笑む場面〕。母は、さらに 「心配しないで」と伝え、額にキスする〔囁き声は、生活雑音よる小さいので、構わないと思うのだが…〕

父がマーカスの前に片膝をつき、“訓練” に出かける準備をさせる(1枚目の写真)。マーカスは、事ここに至っても 「行きたくない」と手話で主張する。「怖れることは何もない」。「あるよ。奴らだ」。そこに、姉が 「私が行く」と割り込む。「お前には、ここで、お母さんを手伝って欲しい」。それでも、姉は 「行きたい」と強く意思表示(2枚目の写真)。「ここにいろ。安全だ」。姉は怒って去って行く。父はそのまま出かけるが、マーカスは母を向いたまま(3枚目の写真、矢印は姉)。父が画面から消えると、あきらめたマーカスは、後に付いて行く。この3枚目の写真で、遠くに建っているのが穀物貯蔵用サイロ。画面の上部には、白と赤の電球が、別配線で吊るされている。この後、普通なら父とマーカスの “訓練” に移行するのだろうが、監督はミリセント・シモンズが好きなので、2分20秒にわたって顔のアップ映像を撮り続ける。

父は、マーカスを渓流に連れて行く。そして、リュックを降ろすと、元々は裸足なので、そのまま川に入って行く(1枚目の写真)。そして、仕掛けておいた筌(うけ)〔細いツルを編んで作った筒状のfish basket trap/中に入った魚は外に出られない〕の中から 魚を両手で握って取り出し、マーカスの前に置く。父の手から離れて飛び跳ねる魚を見て マーカスは逃げようとするが〔魚が音を出している〕、父は、手をつかんで行かせない。マーカスは 「奴らが聞いてる」と必死だ(2枚目の写真)。父は、左手を拡げて落ち行けと合図すると、「私を見ろ」と指で言い(3枚目の写真)、次に 「聞け」と手を耳に当てる。そして、「川… うるさい」「小さな音… 安全」「大きな音… 安全じゃない」と教える。さらに 「近くの別の場所… もっとうるさい… おまえ安全」とも〔このくらい音が大きければ、囁き声は全然OKなのに…〕

その後、母が母屋の地下室の階段で、飼料用トウモロコシの大きな麻袋〔中身は不明〕を引きずり上げる場面が挿入される。この時、袋が階段の “寝ていた釘” に引っ掛かり、袋を無理に引っ張ったことで、釘が垂直に立ってしまう〔後で、階段を降りる時、母の足を釘が貫く〕。父は、マーカスを滝の際まで連れて行く。そして、口に手を当て、「オー!」と叫び、マーカスをびっくりさせる(1枚目の写真)〔せせせらぎでは 囁き声もダメ、滝だと叫んでOKは、落差があり過ぎる〕。そして、初めて口で話す。「なあ、もう大丈夫だ。平気なんだ。約束する」。そして、マーカスにも叫べと促す。マーカスは、思い切り叫ぶが(2枚目の写真)、滝を通しての映像なので、声はほとんど聞こえない。その後、母が母屋の2階に行く短いシーンがある〔ボーの部屋に行った〕。ここで感じる一番の疑問は、廊下の壁に掛けられたままの10個以上の小さな額。万一落ちれば大きな音を出すのに、なぜ外さないのだろう? 一方、父の態度に腹を立てた姉は、1年前 ボーが殺された橋に向かう。滝つぼの前に座った2人。マーカスは 「なぜ、お姉ちゃんを来させなかったの?」と質問する。返事がないので 「責めてるの? あのことで?」と追加する。「違う」。「お姉ちゃん、自分を責めてるよ」。「誰のせいでもない」。「まだ、お姉ちゃんのこと、好きだよね?」。「当たり前だ」。「なら、そう言わなくちゃ」(3枚目の写真)。その頃、姉は、ボーを偲ぶ十字架の前で、家から持ってきたスペースシャトルのおもちゃの “スピーカーの電線” を切断し、スイッチを入れる〔ボーが怪物に殺された時、手に持っていたのに、なぜ壊れずに残ったのだろう/そして、十字架の前にはぬいぐるみなどボーが好きだった物が置かれているのに、なぜシャトルのおもちゃだけ家に持ち帰ったのだろう?/どれがスピーカーへの配線で、どれがピカピカ光る電球への配線なのか、どうやって知ったのだろう?→全体に、ご都合主義的〕。ここで、重要な情報は、木の十字架に彫られたボーの生没年。2016年生まれ、2020年死亡。ということは、映画の現在は2021年10月3日ということになる。

滝からの帰り、2人は1件の家の前を通る。マーカスは、初めてみる家に目をみはる(1枚目の写真)。家は荒れ果て、ガラスで囲まれたバルコニーの中の壁には、「KEEP」と書かれている。下の字が見えないが、「KEEP OUT(近づくな)」、「KEEP AWAY(離れろ)」、「KEEP OFF(入るな)」の何れかであろう。マーカスが、下を向いて歩き始めると、家とは反対側の木立の中に白髪の老人が立っている。マーカスが気付かずに通り過ぎようとすると、父のリュックに顔をぶつける。マーカスはようやく老人に気付く。老人の前には、その奥さんと思われる女性の新しい死体が横たわっている〔一部を怪物に食われた?〕。父は、老人をまっすぐ見ると、口に指を当て、声を上げないよう頼む。しかし、妻の死に居たたまれなくなった老人は大声で叫んでしまい、それと同時に父はマーカスを抱き全速で走って逃げる。そして、一定距離走ると木の陰に隠れ、マーカスの口を押える。しばらくすると、怪物が現われた音がし、マーカスは口を押えられたまま、目を剥く(2枚目の写真)。その直後、老人は怪物に襲われる(3枚目の写真、矢印)。その音を聞いたマーカスは、両手で耳を塞ぐ(4枚目の写真)。ここは、父の家から遠く離れてはいないので、老人とは顔見知りの可能性が高い。両者は、なぜ没交渉だったのだろう? それに、そもそも、父はなぜ行きと帰りで違う道を選んだのだろう? このシーンは、わざと怪物を見せるために仕組んだとしか思えない。

2人が暗くなってから農場に戻ると、張り巡らされたライトが赤に変わっている(1枚目の写真)。こうなった理由は、母屋の2階にいた母が、写真の額を持って下に行こうとした時に破水が始まり、1階まで降りたところで生まれそうになって休む。そして、左手でお腹を押さえながら地下室への階段を降りる途中で、釘を踏んでしまい、両手で梁につかまって体を支える。しかし、右手に持っていた額はそのまま床に落ち、ガラスが割れ、大きな音を出てたから。母は、声を出さないよう、2センチほど刺さった釘から足を引き抜き、そのまま何とか階段を降り切ると、照明のスイッチを赤に切り替える。そして、階段まで戻ると、上には怪物がいた。母は、足の激痛と、破水に耐えながら、目覚まし時計のアラームをセットする。そして、それが鳴り出し、怪物が時計を襲っている隙に階段を上がって1階に逃げる。しかし、玄関から外に逃げようとすると、外にも怪物がいた〔この怪物は2匹目でしかありえないのだが、映画は、“地下室を襲った怪物” が何らかの方法で先回りしたと言いたいらしい〕。そして、1枚目の写真のシーンのあと、2人で納屋まで行った父は、マーカスに懐中電灯を渡し、「ロケット花火… 頼む… 音を立ててくれ… 大きな音… お母さん… お前の助けが要る… お前なら… できる」と頼み(2枚目の写真)、信頼の印に額と額を付け、キスをする。マーカスは、懐中電灯で照らしながら 遠く離れた場所に走って行く(3枚目の写真)〔手に花火を持っていない〕

マーカスは、地面に数本のロケット花火を突き刺すと、導火線に点火し(1枚目の写真)、すぐにその場を離れる〔こんな事態を想定して、大型のロケット花火をわざわざ持って行ったのだろうか? ただ、マーカスは手に持っていなかったし、バッグに入るほど小さくはない〕。1発目が上がるが、アメリカで市販されているロケット花火の動画に比べ、かなりきれいだ(2枚目の写真)〔きれいな球状なので、打ち上げ花火のように見える〕。これを合図に、父は 納屋にあったライフル銃を持って母屋に向かって走る(3枚目の写真、他の花火も上がっている)。それを、1キロ以上離れた場所で見た姉は、異常事態が起きたことを知り、走って戻る〔花火がよほど大きく、高く上がっていないと、姉からは見えない。日本流に言って、5号玉以上の打ち上げ花火が使われている〕。父は、怪物がいなくなった母屋の中に、銃を構えて入って行き、赤ちゃんを産んでしまった妻を見つける〔「しまった」と書いたのは、赤ちゃんが泣き声を上げるため〕

マーカスがトウモロコシ畑の中の通路を歩いていると、物音がしたので立ち止まり、辺りを懐中電灯で照らす(1枚目の写真)。何も見えないが、さらに怪しい音がしたので(2枚目の写真)、走って逃げ出し〔走る音がする〕、途中からトウモロコシの中に潜り込む〔葉を掻き分ける音がする〕。そして、大きなタイヤ(?)にぶつかって倒れる〔ぶつかった音がする/これらの音は、なぜか怪物に気付かれない〕。一方、赤ん坊を抱いた妻を抱え持った父は、母屋を出て納屋まで歩き、地下に降りて行き、マットレスをズラして封鎖する(3枚目の写真、矢印はマットレスを動かす方向)〔侵入防止のため/そのため、わざわざ納屋まで来た。母屋の地下室では怪物が自由に出入りできる〕。そして、赤ちゃんに酸素マスクを付けると 木の箱に入れて蓋をし、泣き声が外に漏れないようにする〔酸素ボンベの入った木の箱は、出産が分かった段階で、予め用意してあった〕

姉がトウモロコシ畑の中の通路を歩いていると、トウモロコシの間から光が漏れている。何事かとひざまずいて覗くと、懐中電灯がまっすぐ姉を照らす〔マーカスがタイヤにぶつかった時、地面に落ち 都合のいい向きに転がった〕。その姉の後ろに、怪物が姿を見せる(1枚目の写真、矢印)。怪物は、独特の唸り声を出すが、人工内耳のマイクが壊れている姉には、その音が聞こえない。しかし、怪物が 小さな音を探ろうと、装甲を開けて “耳” の部分を開放し、独特な音を出した時、姉のマイクの変換装置がそれに反応し、嫌な電気音となって聴覚を刺激する。それを止めようと、姉が変換装置のダイヤルに触れると(2枚目の写真、矢印)、変換装置から出た音が、怪物に苦痛を与える高周波音だったため〔姉にとっても耐え難い音〕、怪物は装甲を閉ざしてトウモロコシ畑の中に逃げ込む(3枚目の写真、矢印は怪物の逃げる方向)〔怪物に対する攻撃法が分かる重要な場面〕

姉は、耐えられなくなってスイッチを切り、畑の中の “光” を調べに行く。落ちていた懐中電灯を取ろうとすると、その手をマーカスがつかむ。そして、2人は抱き合う(1枚目の写真)。一方、父は、「あの子たちを守れないとしたら、私たちは何なの?」という妻の強い言葉に押され、妻の安全のためにライフル銃を残し、懐中電灯だけ持って 子供達を探しに外に出る。その際、父は気付かないが、怪物によって引き裂かれた貯水槽(?)の鉄板から、納屋に水が流れ込んでいて、それが地下室にも入っていく。一方、2人は穀物貯蔵用サイロの上に避難する。姉は、父に場所を知らせようと、数リットルの燃料に火を点ける。しかし、丘の上にあるサイロは納屋から遠く離れ、おまけに、頂部が広く、真ん中で火を焚いても炎の先端を下から見ることはできない。さらに、父は直接探しに行かず、母屋の地下室の監視カメラの映像しか見ていない。そして、燃料がなくなり、火も消える。マーカスは 「心配しないで… パパはちゃんと来る」と手話で伝えるが(2枚目の写真)、姉は首を横に振る。マーカスは、姉に抱き着き、そのあと、涙を浮かべて周りを見る(3枚目の写真)。納屋の地下では、水が溜まって赤ちゃんの木の箱が浮き始めるが、そんな時、どこから侵入したのか、怪物〔トウモロコシ畑にいた奴〕が現れる。この時、赤ちゃんを抱いた母は死を覚悟する。

サイロの上では、姉が 「ここにいてもダメ。行こう」と指示する〔ミリセント・シモンズは聴覚障害者なので、手話のキレが鋭い。それは誰にも真似ができないが、逆に、その手話の “演技” が、無表情なことと合わせ、この状況で適切なのかという疑問を感じさせる(つまり、非常に強制的で、断固とした命令のイメージを与える)〕。マーカスは 「パパは来る」「ちゃんと来る」と反対するが(1枚目の写真)、姉は「あんたのためでしょ」とすげない。「違う。パパが言った」と、自分を見てもくれない姉に向かって手を動かしていると、突然、蓋の1ヶ所がバタンと開き、マーカスは落下する。幸い、粒状のトウモロコシの上だったのでケガはしなくて済んだが、顔を腕だけ残して全身が埋まってしまい(2枚目の写真)、音を聞き付けた怪物〔納屋の地下にいた奴〕を呼び寄せる〔母が助かる〕。姉は、マーカスを助けようとサイロに飛び込む。マーカスは、落ちた鉄板に何とかつかまって半身を出し、一緒に落ちた懐中電灯も拾うことができた。姉は、鉄板につかまろうとして失敗し、トウモロコシの中に埋まってしまうが、マーカスが手探りで引っ張り上げる。2人は鉄板の上で再び抱き合う。怪物が近くにいるらしいことに気付いたマーカスは、姉にはそれが聞こえないので、唇に指を当てて注意する(3枚目の写真)。

マーカスが、懐中電灯を真上の開口部に向けた時には、何もいなかったが(1枚目の写真)、向きを変えしばらくすると、怪物が、姉の目の前に落下する。2年は鉄板を自分たちの頭の上に置いて防御する(2枚目の写真)。怪物の最初の一撃が鉄板の誰もいない所を貫いた後、姉の変換装置が再び変調をきたし、異常な高音が怪物を苦しめ、そして、急にいなくなる。2人が鉄板の陰から覗いてみると、サイロの壁には怪物が逃げ出した巨大な穴が開いていた(3枚目の写真、矢印は穴の縁)。

母は、突然怪物がいなくなったので、釘に貫通された足を引きずり、赤ちゃんを抱いて納屋の階段を登り、重いマットレスを動かし、納屋から外に出ると、100メートルほど歩いて母屋まで行き、釘を踏まないように気を付けながら地下室に降りる〔映画では、説明がなく 分かりにくい〕。父は、音を聞き、怪物が突進していったのを目撃したので、大急ぎでサイロの近くまで行くと、そこに “穴” から飛び降りた2人が走り寄る。地下室の監視カメラの映像を見ていた母の顔が穏やかになるのは、それを見たからであろう。父は 「大丈夫か?」と手で訊くが(1枚目の写真)、その時、怪物の音が聞こえる。父は、子供を救おうと、2人をピックアップトラックに行かせる(2枚目の写真、矢印)。姉はトラックの下に潜り込み、マーカスは窓から運転席に入る(3枚目の写真)。

父は、柱だけ残った廃屋の上に怪物がいるらしいと感じ、柱の横に置いてあった斧を取る。そして、頭上にいる怪物に向かって切り付けるが、怪物の全身を覆った装甲が硬すぎて、斧は弾き飛ばされ、その衝撃で父も地面に叩きつけられる(1枚目の写真、矢印は怪物、父は宙を飛んでいる)。怪物は即座に父に襲いかかると思われたが、その姿を見たマーカスが、「パパ!」と悲鳴を上げる(2枚目の写真)。耳が聴こえない姉が、その直後になぜ運転席に移動したのかは不明〔ドアが開き、マーカスが叫ぶのを見た?〕。姉の変換装置がまた変調をきたすが、姉が嫌がってスイッチを切ったため、トラックは怪物に襲われる(3枚目の写真)。

その騒音に気付いた父〔重傷を負っている〕は、なんとか立ち上がると、自分を見ている姉に向かって、「私は… お前を… 愛してる。ずっと… お前を… 愛してきた」と腕で語ると(1枚目の写真)、怪物に向かって叫ぶ。父の “言葉” を見ていなかったマーカスは、イスの陰でその叫ぶ声を聞き、意味を悟る(2枚目の写真)。マーカスは、怪物がいなくなると同時に、パーキングブレーキを解除する。トラックは、坂を下ってまっすぐ納屋に走って行く〔父は犠牲になった〕。モニターを見ていた母は、夫の死を悲しみながら、母屋を出て、トラックに向かう〔赤ちゃんは地下室に残してきた〕。3人は抱き合う(3枚目の写真)。

3人は早々に母屋の地下室に避難する。母は、籠に入れておいた赤ちゃんをマーカスに抱かせ、世話を頼む。姉の目は、初めて入る地下室に置かれた人工内耳の何個もの部品に釘付けになる。父はこんなにも自分のことを考えてくれていた… すると、怪物が階段を降りてくる〔4人は音も立てなかったのに、なぜ?〕。母は、効果のないことを承知で ライフル銃を怪物に向ける。怪物の口から音が発せられると、モニターの画面が一斉に途切れる(1枚目の写真、黄色の矢印は怪物、青の矢印は監視カメラの映像が映らなくなった全モニター)。怪物は 小さな音を捉えようと、装甲を一部開けて “耳” を露出させる。ブラウン管方式のモニターの出す音が気に食わない怪物は、腕でモニターを破壊する。その時、姉の目は、ホワイトボードに書かれた「弱点 は何だ」に惹きつけられる。そして、以前起きた不思議な現象と結び付け、さっきOFFにした人工内耳をONにする。すさまじい音が聴神経を襲うが、怪物も大きなショックを受ける。それを見た姉は、マイクのスイッチを入れ、人工内耳の変換装置をマイクに押し付ける(2枚目の写真、矢印)。怪物は苦しみ、顔の装甲が全開になる。そして床に倒れる。マイクを消すと再び立ち上がるが、装甲の開いた顔に母がライフルを撃ち込むと破壊されて死ぬ(3枚目の写真)。

TVモニターは正常に戻る。マーカスが映る最後の場面(1枚目の写真)を経て、監視カメラに2匹の怪物が映る(2枚目の写真、矢印はそのうちの1匹)。しかし、2人にとって、もう何も怖いものはない。姉は、マイクのONにし、音量を最大にする(3枚目の写真、矢印)。これで、変換装置をマイクに押し付ければ戦闘準備完了だ。母がライフルを持ったところで映画は終わる。

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